最高裁判所第一小法廷 昭和25年(れ)1971号 判決 1951年5月17日
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人奥村文輔の上告趣意第一点について。
原審がその第一回公判開廷後引続き一五日以上経過した後に開いた第二回公判において公判手続を更新せずして審理を進めていることは所論のとおりである。しかし、所論の刑訴規則施行規則三条三号が違憲、無効のものと解すべきでないことは当裁判所昭和二四年(れ)第二一二七号同二五年一〇月二五日大法廷判決の趣旨に徴して明らかなところである。されば同条号の規定が違憲無効のものと前提して原判決を破棄すべしとの論旨はとるをえない。
同第二点について。
しかし、原判示事実の認定はその挙示する証拠に照らしてこれを肯認することができ、その間反経験則等の違法は存しない。論旨は独自の見解に立って、原審の証拠調に関する裁量権の行使を非難しその事実認定を不当とするにとどまり、上告適法の理由とならない。そして旧刑訴の適用をうける本件については刑訴四一一条による職権発動の問題はおこりえない筋合であるから、原判決を破棄しなければ著しく正義に反すとの論旨はとるをえない。
よって旧刑訴四四六条に従い主文のとおり判決する。
この判決は論旨第一点に対する沢田裁判官の反対意見(この判決に引用した大法廷判決における同裁判官の少数意見)を除くの外裁判官全員一致の意見によるものである。
(裁判長裁判官 沢田竹治郎 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 岩松三郎)